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第3話 ドラマチックな"夢の配合"の秘密
厩舎（きゅうしゃ）関係者の当初の予想に反し、ミスターシービーは爆発的な勢いで勝ちまくった。ただ、シービーが“タダ者ではない”と認知されたのは、はじめての敗戦のときなのだから皮肉といえば皮肉である。すなわち、3歳最後のレースとなったひいらぎ賞でまさかの出遅れを犯し、やむなく後方からの競馬を余儀なくされ、追い込み馬へと変身したのである。“シービー戦法”といわれた怒涛の追い込みが、いわゆる偶然の産物であることはあまりにも有名になりすぎた感があるが、それにしてもいかにも“出来すぎた”話ではある。
出来すぎといえば、ミスターシービー・ストーリーは出生のいきさつからして出来すぎというしかない。
父トウショウボーイと母シービークインはともに昭和48年生まれの同期生で、かたや昭和51年の年度代表馬、かたやオークストライアルの毎日王冠に勝った名牝（めいひん）とくれば、まさしく“夢の配合”である。しかもこの2頭は同じレースでデビューしたというのだから、出来すぎ以外のなにものでもない。ちなみに、このレースにはあのグリーングラスも出ており、3頭の名馬がそろってデビューした超豪華な新馬戦としてあまりにも有名である。
トウショウボーイは日高軽種馬農協の所属種牡馬（しゅぼば）だが、当時の規則では千明牧場は軽種馬農協の種牡馬を交配できないことになっていた。しかし、シービークインと同じ新馬戦で走ったトウショウボーイのスピードに圧倒された千明大作は、トウショウボーイが種牡馬になったら必ずシービークインと配合させようと、すでに新馬戦のときに決めていたのである。また、農協側にしても、当時人気のなかった内国産種牡馬を成功させるためには、いい繁殖牝馬に付けるのが一番と考えていた。トウショウボーイと付けたいという千明大作、いい繁殖牝馬（はんしょくひんば）に付けたいという農協。両者の熱意と思惑ははからずも一致していた。そこで、一世一代の“掟破り”の交配が行われたのである。そして、この話にはさらにおまけがつく。シービークインは見事にトウショウボーイの仔（こ）を身ごもったが、それ以降はどんな種牡馬を付けても受胎することはなかったのである。すなわち、ミスターシービーはシービークインにとってたった1頭しかいない産駒（さんく）なのだ。
なんというドラマチックな出生の秘密であろうか……。
このようなエピソードを持った馬が、クラシック戦線で暴れまくるのだから、大きな話題を集めたのは当然であろう。さらにいえば、父母がともに逃げ馬だったにもかかわらず、全く正反対の追い込み馬に育ったのもファン心理をくすぐる話ではある。それだけに、トウショウボーイ、シービークインを見てきたファンが、ミスターシービーに大きな夢を託すようになったのは至極当然のことといえるだろう。
インパクト出陣！ 程よい気合乗り/菊花賞
2005年10月17日（月） 8時56分 日刊スポーツ
いよいよ菊花賞ウイークの幕開けだ。ディープインパクトは16日、馬場開場直後の午前4時に坂路に登場した。ゆったりと感触を確かめるように4ハロン80秒1で駆け上がった。その後はDウッドコースに移動してのキャンター。4ハロン57秒6、ラスト12秒6をマークした。首を下げて、程よい気合乗り。レース1週間前としては万全の走りを見せた。手綱を取った池江助手は「最初の1ハロンをゆったりめに行ってるからね。気分良さそうに走っていたし、いい感じのテンション。指示通りに調整できたと思うよ」と納得の表情を見せた。
今週は水曜（19日）に最終追い切りを予定している。武豊騎手が騎乗し、感触を確かめる。「1週前追い切りの時は、その週がレースかと勘違いしてそうだったが、まだ日にちがあることを理解してる」。あとは今週の調整を待つのみ。21年ぶりの無敗の3冠に向けて、カウントダウンが始まっている。
[ 10月17日 8時56分 更新 ]