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第3話 〜デビュー前〜調教で180度変わった評価
たとえ、賞賛であっても、早いうちから評価が定まってしまうのは、案外つまらないことかもしれない。評価が定まるということは、底が見えたということにほかならないからだ。その点、幼少期のトウカイテイオーはなんとも評価しづらい不可解な馬であり、大きく飛躍する可能性が残されていた。
実際、育成所に移って運動しはじめる頃になると、徐々に素質の片鱗をのぞかせてゆくことになる。
「いざまたがってみると、ことのほかクッションが利いていて、全身これバネといった感じ。乗り味の点でいえば“爽快”というしかありません」
トウカイテイオーの第二の故郷といわれる、平取の二風谷（にぶたに）軽種馬共同育成センターの岡本幸広場長は、テイオーがタダ者ではないと見抜いていた。もちろん、当初はやけに貧弱な馬体とくにゃくにゃした繋ぎに疑問を抱き、第一印象からそのような直感を持ったのでないことはいうまでもない。しかし、実際に乗った感触の素晴らしさが、そのような第一印象を覆してしまったのである。真の名馬とは、はじめは欠点が目立っていても、日に日に成長してゆく馬といわれているが、トウカイテイオーもまさにそのようなタイプだったのである。そして、入厩（にゅうきゅう）が近づくにつれ、
「東へ行ける馬です」（クラシックのために東上できる、という意）
と、誰彼なく自信のほどを語っていたという。
それは、栗東の松元省一厩舎に入厩したときも同様であった。あまり芳しくなかった第一印象が、いざ調教の段になると180度変わっていたのである。
「とにかく乗ってみてよ。こんな柔らかい馬はちょっといないよ」
調教助手の北口浩幸は、自厩のスタッフをつかまえてはそんなふうに絶賛した。そして、またがった者の口から出たのが、賞賛の言葉ばかりであったのは言うまでもない。また、坂路で見せる抜群の動きは見守る者の目を釘付けにした。デビューが近づくにつれ、トウカイテイオーは栗東トレセンきっての評判馬になっていたのである。
女王メサイア、激戦の反動なし
2005年10月18日（火） 9時2分 日刊スポーツ
秋華賞を制したエアメサイア（牝3、栗東・伊藤雄）が17日、女王としての朝を迎えた。カイバをつけにきた野田厩務員が元気な姿を確認し、ホッと胸をなで下ろしていた。「おれらが喜びに浸れるのは一瞬だけ。常にケアを心掛けるのが仕事だから」。
野田厩務員にとってもG1制覇は初めてだった。02年に伊藤雄厩舎のスタッフになったのは、ファインモーションがエリザベス女王杯を勝った1週間後だった。「親分（伊藤雄師）に声を掛けてもらったからこそ、今のおれがある。娘2人も口取り写真に加わってうれしそうだった。内回りは分が悪いと思ってたけど、ユタカが完ぺきな競馬をしてくれた」と胸の内を明かした。次走は外回りのエリザベス女王杯（G1、芝2200メートル、11月13日＝京都）の見込み。現役最強牝馬を目指す。
[ 10月18日 9時2分 更新 ]